★信州くだものニュース掲載原稿
★海外「ふじ」物語〜その11

   平成21年 3月原稿
   スペインの「ふじ」

 今年の1月スペインを旅した。東欧を除くヨーロッパではフランス、イタリア、ドイツがりんごの生産量が多く、ともに200万トン前後の生産をしている。スペインについては60〜70万トンの生産量である。りんごピンクレディーはフランス、イタリア、スペインのみが生産を許されているので、その点で私には興味深かった。スペインのりんご生産地はどちらかというとフランス(ピレネー山脈)寄りに位置していて、栽培方法、品種などもフランスに近い。もちろんすべてがM9の自根を使った高密植栽培であった。私が訪れた農場はバルセロナから約140キロ、電車で2時間の場所にあるフィゲラス近郊に位置していた。フィゲラスという街は世界的に有名な画家のダリの生まれた街で美術館もあり海岸もありリゾート地で観光客も多い。訪問したところはコスタブラバという会社組織の農場で、総面積750ヘクタール構成農家数は40件、一番大きい農家が100へクタール、次が40ヘクタール、あとは皆それ以下の中規模農家で構成されていた。スペインでのピンクレディーはこの会社ともう一社だけが栽培を許可されていてスペイン全体のピンクレディーの生産量は   約7,000トンであった。ヨーロッパではピンクレディーの生産については調整されていて、今はもう新植が許されていない。現在のスペインでの植栽本数は18,000本である。
 さて、前置きが長くなってしまったが、本題の「ふじ」について紹介したい。今回最初に案内してもらった畑がふじの畑だあった。M9自根で10アール250本植え、8〜10年性の木で誘引もし、落ち着いて揃っていた。系統は「ラクラク」「キク」それと「長ふー2」であったが、「長ふー2」が着色も良く好成績だといっていた。ヨーロッパでは「キク」が一番良いと聞いていたがここでは「長ふー2」が一番と聞いてビックリした。とはいえ「ふじ」全般に製品化率が低く、隔年結果もあり、農家にとっては作り難い品種だといっていた。スペインのりんごは約80%が国内消費であり、ゴールデンの生産もまだ多い。ふじについては味が良いと消費者からは求められているようだが、その作り難さからもう新植する人はいないそうである。ピンクレディーにもふじにも受粉樹にグラニースミスを使っていた。選果場でもマーケットでも売られている「ふじ」を見たが、着色が良いものからあまり良くないものまで幅広く売られていた。価格はキロ250〜300円位で販売されていた。中国産の「ふじ」もスペインに入ってきているがこちらは味が悪く、最近は見なくなったといっていた。スペインの国土は日本の1,3倍、人口は約4200万人、、りんごの生産量は60万トンとしても日本人よりも少なくとも2倍以上はりんごを消費している。これを見てもまだまだ努力次第で日本でもりんごの消費を伸ばすことが可能だと思う。新品種に期待したい。

 

 果樹研究会中信副支部長

    中村隆宣