★信州くだものニュース掲載原稿
★海外「ふじ」物語〜その4

平成16年8月5日号掲載

アメリカの「ふじ」B

一時期「ふじ」が大増産されたカリフォルニア州では、現在「ふじ」は激減し、「ガラ」や「ピンクレディー」などの栽培が増加している。カリフォルニア州産の「ふじ」がアメリカでの「ふじ」ブームに火をつけたが、着色不良から、やがて他の着色の良い「ふじ」にやぶれ激減した。一方、ワシントン州の「ふじ」も生産増により「レッドデリシャス」「ゴールデンデリシャス」につぐ第三位の品種になったが栽培には苦労している。一昨年ワシントン州ブリュースターのある農場では約400ヘクタールの「ふじ」が、収穫せずに10月末の大寒波にやられたという。当時その農場に入っていた日本人の研修生からこの話を聞いた。「ふじ」の食味の良さと、貯蔵性は抜群である。特に「ふじ」の食味の良さはアメリカ人も認めるようになった。今、「ふじ」や「ガラ」といった食味の良いりんごの増産により、「レッドデリシャス」の人気が落ちている。輸出向けに増産したりんごが国内市場に出回りだし、おかげで主力品種の人気がさがったとは皮肉な話である。20年前には全然関心がなかった、オレゴン州の日系農家も今は「ふじ」の栽培を行なっている。「ふじ」は決して栽培しやすいりんごではない。世界中でその作りにくさに手を焼いている。アメリカでは日焼け果が多く製品化率は低い。しかし、それでもワシントン州には「ふじ」に惚れこみ100ヘクタール以上も経営している農家が数多くある。これからのワシントン州の「ふじ」の行方がたいへん興味深い。彼らは今後も「ふじ」を作り続けるだろうか。次回はアメリカよりもっと早くに「ふじ」の食味の良さに気づき増産した、ブラジルについて書きたい。

 

 果樹研究会中信副支部長

    中村隆宣