★信州くだものニュース掲載原稿
★海外「ふじ」物語〜その8

平成17年3月25日号掲載

ニュージーランドの「ふじ」

 ニュージーランド(以下NZ と略)、は一時期、積極的にふじを栽培して、海外へも輸出していた。私が始めてNZ  を訪れた1983年頃には、すでにふじの栽培が始まり、80年代後半には輸出も本格化されていた。その頃アメリカに輸出されていたNZ産のふじをカリフォルニア州のマーケットで見かけたが、いよいよここまで来たかという感じを持った。しかし、小玉で着色も悪く、品質はお粗末なものであった。そして現在、そのNZ産のふじはほぼなくなりつつある。どうしてこうなったのか、考えられる理由をいくつか書いてみたい。まず、世界的にふじの生産量が増え、小玉で品質の劣るNZ産ふじは競争力を失った。例えば輸出先のひとつである台湾では大玉のふじが好まれる。それと、また、当時ヨーロッパに輸出されたふじは蜜入りが原因で処分されたものが多かった。今でこそヨーロッパでもふじの人気が出て、消費が伸びてきたが、当時はまだふじに対する知名度が少なかった。蜜入りは今でも障害果として欧米では嫌われている。そして、NZで育種されたパシフィックシリーズのりんごやジャズ、オーストラリアで育種されたピンクレディーなどの魅力的な品種の登場により、ふじ栽培の必要性がなくなった事も大きい。ふじのような栽培しにくいりんごをわざわざ作らなくてももっと作りやすくて収益の上がるりんごが現れたのである。

2000年に久しぶりに訪れたNZのりんご栽培は大きく変わっていた。ふじはほとんど見られなくなっていた。残されたふじの木も、改植途中であった。NZ のふじは比較的早い段階で導入されたが、見切るのも早かった。そのスピードの速さには驚く。品種更新など生産に対する意欲は見習うところが大きい。

 

 果樹研究会中信副支部長

    中村隆宣