★信州くだものニュース掲載原稿
★海外「ふじ」物語〜その9

   平成17年6月25日号掲載
   オーストラリアの「ふじ」

 今から18年前、1987年の4月、私ははじめてオーストラリアのタスマニア州に行った。タスマニア州はオーストラリアの南端に位置するりんご栽培のとても盛んな州である。タスマニアの試験場に行ったところ、ふじの栽培をしていると聞きびっくりした。偶然にもその翌日、ふじの栽培検討会が行なわれるというので、私も参加した。そこには、約30人の生産者が、遠くはビクトリア州からも来ていた。そこで私は「あなたが、オーストラリアで実際に実ったふじを見るはじめての日本人だ。」と告げられた。導入から5年、初結実からまだ2年目のことであった。最初に受けた質問は「これは本当にふじですか」との冗談まじりの質問だった。そこに実っていたりんごは私の地元長野県南安曇郡三郷村で発見された長ふー2であった。他の系統もあったが長ふー2が一番良いとのことだった。     それから、私も何回かタスマニアに出かけ、タスマニアからも多くの生産者、関係者が長野県にやって来た。長ふー2では着色がベタに近く、縞がないからと、長野県からいくつもの着色の良い縞系を持ち帰っていた。オーストラリア全体のりんご生産量は約30万トン、その内ふじの生産量は現在約27,000トンで全りんご生産量の9%になっている。タスマニアではふじの生産量は7千トンで全体の15%にもなっている。2003年の新稙りんごの25%がタスマニアではふじであった。もちろん、ピンクレディーやガラの新稙も多い。2001年以降に植えられたふじの系統は小倉系(中田系)が殆どである。これも我が三郷村出身のふじである。着色不良、さび、隔年結果等ふじ栽培はさまざまな問題を抱えてはいるが、今でも新稙を続けているオーストラリアのふじ栽培にはこれからも注目して行きたい。タスマニア産のふじは皆さん承知の通り、約200トンが毎年日本にも輸出されている。その他の重要な輸出国は約2500トン輸出している台湾である。
 
はじめてオーストラリアに行ったとき試験場のハーディー氏が言っていた次のような言葉に私は深く感激した「ふじの味の良さにはとてもびっくりした。たぶんこの味は世界一だろう。ふじのオーストラリアでの将来に大きな期待を持っている。」日本人以外にも、ふじの味にほれ込んだ人がいることが私はとても嬉しかった。

 果樹研究会中信副支部長

    中村隆宣