◆ その答えは? ◆

= Tunnel_FAQ =

 


屋外の建設工事では、周囲が見渡せるため、安心感のようなものがあります。
こちらの方向に進みたい、と思えば、特殊な状況でない限りは、進むべき方向が見えるのです。
地下の建設工事では、それが不可能なのです。
進みたい方向は、岩盤(地中/地山の中)の奥深い所なのですから。
ですが、進みたい方向を示すことは可能です。
すでにできた空間(掘り終わった場所)を利用して、今後の進路を示せばよいわけです。


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Eさん、Fさん、Gさんの3人がいます。
この3人を、一直線に並ぶようにしたいと思います。
EさんとFさんは動きません。
Eさんは、自分からFさん越しに見て、
3人が一直線に並ぶようにGさんを誘導すればよいのです。
なおかつ、D点から1歩分離れて立つ、という条件でもあれば、その場所は更に限定されます。
 


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山岳トンネル工事も同様にです。
点Jは岩盤(地山)の中にあって、直接目にすることができません。
点Jと同一の基準で設けることが可能な、点Hと点Iをすでにできた空間に作ります。
点Hと点Iを結ぶ線分上から見ると、進むべき方向がわかります。
そして、基準線(基準点)KLから、進行方向へ18m進む(掘削する)とすれば、
進むべき方向に向けて、その長さだけ掘り進むのです。

 


実際には、もっと複雑になりますが、原理は同じです。

かつては、”腰線(こしせん)”や”下げ振り(さげふり)”/下げ糸といった技法を用いていました。
上図で示す基準となる線や点(青色の部分,点H点Iなど)を、
凧糸を用いて一時的に設置(張る)していました。
進むべき方向などを確認すると撤去し、掘削などの作業をする。
そしてまた、次の進むべき方向などを確認するために、設置する。
その繰り返しでした。
現在では、レーザー光線を用いている建設現場が圧倒的です。
上図で示す黄緑の線を、レーザー光線とイメージしていただければよろしいかと思います。
実際は、レーザー光線は1本ではなく、複数本照射しています。
また、コンピュータと連動したレーザー照射システムを導入する建設現場もあります。
施工に用いる建設機械類を、遠隔操作したりする技術も採用されています。


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こちら側と向こう側との両方から掘っていて、なぜ山の中でぴたりとくっつくのでしょう。
この質問に、端的に回答するのが最も難しいかもしれません。
ひとことで言えば、
基本的なことを、適宜組合わせながら掘り進むことによって、ぴたりとくっつく。
とでも申しましょうか。
何が基本的なことなのか、ということもうまく説明できませんが・・・。
建設工事に関する「測量」のあれこれを、積重ねる/組合わせること、とでもなるでしょうか。

もちろん、工事測量には誤差がつきものです。
ですから、ぴたりとくっつくと言っても、寸分たがわずのぴったりということではありません。
数ミリメートルから数センチメートル程度の範囲で、誤差が発生することは事実です。
しかし、近年では測量技術が向上していますので、くっつく時点での誤差もごくわずかです。


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専門用語となりますが、
こちら側からと向こう側からとそれぞれに掘り進めていき、
(ないしは、どちらか一方からだけ掘り進めていき、)
出会うとき(こと)を「貫通」と言います。

貫通間際になると、正直なところハラハラドキドキします。
無事に貫通するかな、誤差は少ないだろうな、などと不安がよぎるのです。
私の先輩(上司)などは、
初めてトンネル工事に従事して貫通を迎える際、食事が喉を通らなかったそうです。
私も初めて「貫通」を迎えたときは、心臓がバクバクものでした。
その後、数回、「貫通」を迎えていますが、やはり独特の雰囲気があります。
当事者でないと「ピン」とこないかもしれません。
逆説的な表現をすれば、当事者でないと体感できない醍醐味でもあります。

 

     

 

 

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