NEWSその1・小児の気管支喘息治療管理ガイドライン改定のポイント

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小児アレルギー学会作成の「小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2005」が2005年11月18日に協和企画から発行されています。(以下「2005」と記載し、旧ガイドラインを「2002」とする)

 

◆◆◆◆ 長期管理薬の再編成 ◆◆◆◆

 

<2〜5歳での長期管理薬について>

 

・新しいガイドラインでは、基本治療を抗アレルギー薬、あるいは吸入ステロイド薬(考慮)が基本として、追加にテオフィリン徐放製剤を位置づけたので、「2002」にみられたテオフィリン徐放製剤の単独持続投与という選択肢がなくなった。

 

ステップ2(軽症持続型)の新旧比較 ( 「2005」は98p、「2002」は61pから引用 )

小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2005

小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2002

基本治療

抗アレルギー薬 *1 *5

あるいは

吸入ステロイド薬(考慮)(50〜100μg/日)*2

以下のいずれか、あるいは併用

・経口抗アレルギー薬

DSCG+β2刺激剤(1日2回吸入)

・テオフィリン徐放製剤

 

・吸入ステロイド薬(考慮)(〜100μg/日)*2

追加的治療

テオフィリン徐放製剤 *3

*1 抗アレルギー薬:化学伝達物質遊離抑制薬、ヒスタミンH1拮抗薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬。DSCG(インタール)と経口抗アレルギー薬を含む。

*2 吸入ステロイド薬:力価はFP(プロピオン酸フルチカゾン)あるいはBDP(プロピオン酸ベクロメサゾン)換算とする。(蓑島による註:「2002」の「100μg/日」は、現行の製剤に換算してある)

*3 テオフィリン徐放製剤の使用にあたっては、特に発熱時には血中濃度上昇に伴う副作用に注意する。

*5 DSCG吸入液をネブライザーで吸入する場合、必要に応じて少量(0.05〜1.0ml)のβ2刺激剤と一緒に吸入する。β2刺激剤は発作がコントロールされたら中止するのを基本とする。

 

 

<乳児喘息=2歳未満での長期管理薬について>

 

・「2005」では、テオフィリン徐放製剤はステップ3(中等症持続型)以上で投与を考慮するという扱いになった。さらに、*6 *7の注意書きがついている。

 

ステップ2(軽症持続型)の新旧比較  ( 「2005」は131p、「2002」は93pから引用 )

小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2005

小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2002

基本治療

抗アレルギー薬 *1

・経口抗アレルギー薬

 

以下の一つまたは複数の併用(考慮)

DSCG+β2刺激剤(1日2回吸入)

・テオフィリン徐放製剤

(血中濃度5〜10μg/ml)

・吸入ステロイド薬(考慮)(〜50μg/日) *4

追加的治療

DSCG吸入 *2 *3

吸入ステロイド薬*4(50μg/日)

 

ステップ3(中等症持続型)の新旧比較  ( 「2005」は131p、「2002」は93pから引用 )

小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2005

小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2002

基本治療

吸入ステロイド薬 *4(100μg/日)

・吸入ステロイド薬(〜100μg/日) *4

 

以下の一つまたは複数の併用(考慮)

・経口抗アレルギー薬

DSCG+β2刺激剤(1日2回吸入)

・テオフィリン徐放製剤

(血中濃度5〜10μg/ml)

就寝前β2刺激薬(経口・貼付)

追加的治療

以下の一つまたは両者の併用

・ロイコトリエン受容体拮抗薬

DSCG吸入 *3(2〜4回/日)

・β2刺激薬(就寝前貼付あるは経口2回/日)

・テオフィリン徐放製剤(考慮)*6

(血中濃度5〜10μg/ml)

 

*1 経口抗アレルギー薬:ロイコトリエン受容体拮抗薬、ヒスタミンH1拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬、化学伝達物質遊離抑制薬。 吸入抗アレルギー薬:DSCG吸入液(インタール)

*2 経口抗アレルギー薬を使用している場合

*3 吸入液をネブライザーで吸入する。必要に応じて少量(0.05〜1.0ml)のβ2刺激剤と一緒に吸入する。β2刺激剤は発作がコントロールされたら中止するのを基本とする。

*4 BDP-pMDI、FP-pMDIはマスクつき吸入補助具を用いて吸入する。推奨量はBDP、FP換算。(蓑島による註:「2002」の「50μg/日」は、現行の製剤に換算してある)

*6 6ヶ月未満の児は原則として対象にならない。適用を慎重にし、けいれん性疾患のある児には原則として推奨されない。発熱時には、一時減量あるいは中止するかどうか、あらかじめ指導しておくことが望ましい。

*7 ステップ3以上の治療は小児アレルギー専門医の指導・管理のもので行なうことが望ましい。

 

 

◆◆◆◆ 急性発作時の薬剤投与順序の入れ替え ◆◆◆◆

 

<2〜5歳における医療機関での薬物療法> 73p

 

・新しいガイドラインでは、中発作時の吸入以後の薬物は、先にステロイド薬(静注・経口)を行い、and/orでアミノフィリン点滴静注・持続点滴*1の順になった。

*1アミノフィリン点滴静注・持続点滴(商品名ネオフィリン)は、喘息治療に精通した医師のもとで行われることが望ましいとされている。

 

<乳児喘息=2歳未満における医療機関での薬物療法> 118-119p

 

・新しいガイドラインでは、中発作の際、吸入以後の薬物は、ステロイド薬(静注・経口)と輸液を行い、図9-2ではアミノフィリン持続点滴*2は考慮となっている。図9-3フローチャートでは、中発作アミノフィリンの持続点滴は記載されておらず、大発作の場合のイソプロテレノール持続吸入療法の後に、(考慮する)として記載されている。

*2 過剰投与にならないように注意。けいれん性疾患のある乳児への投与は原則として推奨されない。発熱時の使用は適用の有無を慎重に考慮する。 本治療は小児喘息の治療に精通した医師のもとで行われることが望ましい。

 

NEWSその2・食物アレルギーガイドラインから

 

    ◆◆◆ 即時型反応での負荷試験時期 ◆◆◆◆

 

小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会作成の「食物アレルギー診療ガイドライン2005」が2005年11月18日に協和企画から発行されています。

 

29p表6-1 即時型食物アレルギー児における食物負荷試験時期

誘発食物アレルゲン

食物負荷試験時期

備考

卵・牛乳・小麦・大豆

12〜18ヶ月除去後

特異的IgE抗体値(表5-1)の推移を参考に症例によっては6ヶ月後から負荷試験

ピーナッツ・魚・ナッツ

3年間除去後

特異的IgE抗体値(表5-1)の推移を参考に症例によっては1〜2年後から負荷試験

他の食品

12〜18ヶ月ごと

 

*アトピー性皮膚炎児ではCAP陽性アレルゲン食物の未摂取時は、特異的IgE抗体値を参考に1〜3ヶ月後に負荷試験を行なうことができる。

 

25p表5-1 食物特異的IgE抗体レベルkUA/L)と食物負荷試験陽性的中率

食物抗原

牛乳

小麦

大豆

ピーナッツ

魚介類

特異的IgE抗体レベル

kUA/L)

7

2(2歳以下)

15

5(2歳以下)

26

30

14

20

負荷試験陽性

的中率(%)

98

95(2歳以下)

95

95(2歳以下)

74

73

100

100

 

 

以上、蓑島宗夫が引用・編集