ホテルコスト自己負担の影響度

平成17年10月から食費等が自己負担に

厚生労働省は16年12月、施設介護におけるホテルコスト(食費・居住費)について全額自己負担を求めることとし、17年10月、18年の介護報酬改定に先駆けて実施することとしました。これにより、月額約3万円程度の負担増になるといわれています。また、介護保険との整合性を図る上でも、次期診療報酬改定において、医療機関における食費等のホテルコストが自己負担となることは確実です。

サービスへの評価が厳しく

これによってヘルスケア分野に起こる変化は、目に見える形で非常に大きなものであると考えられます。

まず、すでに介護保険導入時に明らかになったように、自己負担の増加に伴い、利用者の権利意識はより明確に現れてきます。提供されるサービスをより厳しい目で見て、価値を実感できるサービスにシフトしていく行動が着実に起きてきます。施設のアメニティー、提供されるサービスの質、スタッフの質、といったハード面、ソフト面両方の価値が厳しく問われてきます。


民間事業者との競争が激化

より端的にいうと、4床室主体の既存介護施設と民間の有料老人ホームなどとの利用料(ホテルコスト)の格差がほとんどない状態になることで、急速に既存介護施設の陳腐化が進み、居住環境の優れた「棲家」への住み替えが進んでくるということになります。


介護施設は追加投資が必要に

長く高齢者介護を支えてきた介護施設は戦略の再構築を余儀なくされることになると思われます。この場合、100床前後の規模の大きな施設が多いということが収益上のメリットを享受してきた源泉であったのですが、今後、「棲家」という観点から見ると大きすぎかつ劣悪な住環境というデメリットに変わります。

今後、介護施設は個室化、ユニットケア化を進めていくことになりますが、敷地の制約等により、かつて病院の病床が療養病床にシフトしてきた際に起こったベッドの減床という事態に直面することにもなりそうです。いずれにせよ、追加投資は避けられそうになく、かつ今後の補助金等の財源を考えますと、すでに計画を具体化させていない限り、補助金を確保して事業に取り組むことは困難になります。この数年間の変化対応力こそ生き残りのポイントであることを理解しなければなりません。