ウエスタンサウンドを求めて!

WE球CR型RIAAイコライザー
WE396A・6189ラインアンプ
フォノイコライザー・アンプの設計と製作
2016’1’6

最近ハイレゾ音源の登場で音質が格段に上がってきました。 急にレコードを聴きたくなりました。 確かにレコードの音質はスンバラシイ!。 多くの方がCDがメインに成っていると思いますが、やはり、良い物は良い! そこで、以前製作した回路を眺めてみると、何も理解してなくて作った物でした。 記事の追試だった事と、満足な測定器も無かった頃に製作した物なので、RIAAカーブがどの位に仕上がった物かも解りません。 とりあえず、以前製作した物は後で見直すとして新たに作ってみたくなりました。球好きとしては真空管を使う事に成りますが一般的に使われる球は12AX7。 完成された物が多くて面白みがありません。 確かにローノイズで良い球なんですが、やはり違う物を作りたいような! 参考に回路をネットで調べると沢山見つかります。 何か特徴の有る物が欲しいので直熱管かウエスタン球が良いと思い構想を練りました。 直熱管2K2Mを使い作ってみましたがマイクロホニック・ノイズが酷くて使えません。 やはり此れですかね? ウエスタンエレクトリックの球。 WE417A。 WE396Aは2回路付きなのでこちらが良さそうです。 ウエスタンサウンドに近く成れば・・・と思うと作ってみたく成ります。 増幅率が全然足りないので、バッファーアンプを1段追加となります。 2.5mVのMMカートリッジからパワーアンプに必要な綺麗な1.0Vの信号を取り出してみたいと思います。 (実際には3V位に成りました)

諸特性等
イコライザー方式 CR型
RIAA特性誤差 20〜20khz(±0.6db)
歪率特性 1khz1V出力時0.035%
真空管(イコライザ部) Western Electric WE396A 2段構成
真空管(ラインアンプ部) Philips ECC JAN 6189W
消費電力 34W
今回の目玉は此れ、ウエスタン・エレクトリック製のWE396A(2C51)です。 写真右側のはテスラの6CC42で同等品として使えます。 5670や中国製の6N3も良いです。
バッファー・アンプには12AU7の高信頼管と言われる6189Wを使いました。 フィリップスのJANと有りますので、軍用品と言う事でしょうか。 E82CC、6189W(μ19.5)、5963(μ21)、5814A、12AU7(μ17)、CV4004、M8136
電源トランスの位置が悪くて誘導ハムが有ったので電源は外に追い出しました。 セパレートタイプにして電源トランスが無くなったのでウエスタンエレクトリックのOPTを入れようと思います。
配線が汚いのが自慢です。 部品は真空管ソケットに直接つけて行くのが私は好きで、必要に応じて端子台代わりに電解コンデンサーをシャーシに接着して使います。 安全な所は空中配線も有りです。 この作り方はブロックに固まるので、そのグランドラインの線をシャーシーグランドのポイントに集める事で、ハム等で悩む事は殆ど有りません。
タカチ製アルミダイキャストの頑丈なケース内に収めました。 小型パワーアンプが追加できるように少し余裕の有る容量を確保してあります。 B電源は約300V62mA迄。
ヒーターはDC−DCコンバーターを使い6V3A迄。 入力は8V〜22Vと広範囲なのでトランス8V端子を整流して使ってあります。 6Vタイプで十分ですが、今回選んだのは可変式で6.3Vに調整しました。サムテックに有ります
失敗作番外編。 これは直熱5極管を使いましたが、やはりマイクロフォニック・ノイズで悩みました。 簡単なフローティングでは駄目で、常にキーンキーンと響いてしまいます。 で、思い切って分解。回路図
シャーシーは117x210x50、トランスケースはヤフオクでゲット。 トランスケース内にWESTERN ELECTRICのライン・トランスを入れてあります。 600Ω出力で送出します。
WE製のGA-50766トランスをOPTとして利用します。 600Ω:700+700Ωを反対にして使います。 直列に結線して2.8kΩ:600Ωは√2800:√600≒2.2:1なので≒6db位のレベルを下げられます。 音の良いライン・トランスとして丁度利用できます。 DCは流せないので15μのコンデンサーを入れてます。トランスは10kΩ:600Ω位までの物で殆どが使えると思います。
今回使用した特別な部品はこちら。 耐圧も十分にあるFILMコンデンサーと@1200円の低ノイズの抵抗(右)。 RIAA素子は神経を使った物が必要です。 回路上、一番先頭に成る部分の抵抗はノイズも大きく増幅されるので、この抵抗だけは最先端技術で作られた抵抗にしてみた。
構想
容量の少ないコンデンサーは手持ちに無いので、数少ない物の中で部品をチョイスしなくてはなりません。 ネットを見ると真空管は12AX7が殆んどで6Dj8もありますが、WE製の球のは無いですね。 今回、此れに決めました。 WE球フォノイコライザーの製作です。 3段構成とします。 2段では増幅率が足りない事は解っています。 3段目はラインアンプとして、LINE入力端子を備えます。 そうなると、スイッチに連動した電源アウトレットも必要です。 パワーアンプやプレーヤーの電源もコントロールさせましょう。 球は見えなく成ってしまいますがハム対策でシールド・ケースに入れて使います。 真空管WE396Aは最低3本必要で、もちろん同等管でも良いです。本当は2段目もSRPPが良いと思いましたが、手持ちの球が丁度3本だったので、この構成にしてあります。 3段目の増幅率の低い球がなくて、此処の6189でμ=20、12AU7で18位有ります。 当初1段増幅器にP−G帰還(NFB)を利用する事を考えましたが、せっかくイコライザーをCR型にしたので、何とかNON−NFBで行きたいと思いOPTを使う事を考えました。 10kΩ:600ΩでWE製を使いたかったのですがトランスがケース内に収まりません。 UTCのSシリーズも候補でしたが、WE製の入力トランスを使う構想です。 偶々600Ω:700+700Ωのトランスが有ったので、これを使います。 なんと本当にウエスタンサウンドにできそうです。 イコライザーを含めて負帰還(NFB)を頼らずにソコソコの性能に仕上がれば音質はかなり期待できます。
RIAA特性

レコードを聴くにはイコライザーアンプが必要で、レコートの信号に合わせたRIAA特性という規格があります。 この規格は1950年代なかばに統一されたもので、それより古いモノラルLP等はNAB、AES、Colubia/LP,RCA等の様々な規格も存在しているみたいです。 簡単に言うとマイクロホンと違い単純に信号を増幅するのではなく補正をして増幅する事が必要です。  私がレコードを買い始めたのは1960年代なので全てRIAA特性の録音の筈なので、ここではRIAAカーブ用のイコライザーの製作になります。 決められた特性のカーブから成り、50HZ(3180μs)から、500HZ(318μs)、500hzから1Khzは平坦、1KHZから、2122 HZ(75μs)迄其々約20db減衰のカーブ特性です。  イコライザーは、この50HZ、500HZ、2122HZの3点のポイントにRIAA補正を掛ける計算となります。50hz地点はターンオーバー交差点。2122hz地点はロールオフ交差点

CR型のイコライザーを多少理解してから製作しようと思います。
まず欠点は、NF型に比べるとSN比、歪が多く特性も劣る。 じゃあ良い所は、NFBによる影響が無い独特のクリア感がある。 良いですねクリア感! 此れを求めています。ネット検索で計算式が有りました。 こちらに計算式が詳しく載っていますので、参考にさせて頂き製作しました。 簡単に言うとRIAA素子の基本を6.8kΩと0.047μに固定して他の部品を決定していく方法で一番ロスの少ない回路に成ります。



たった此れだけの部品ですが、次段グリッドの抵抗も此の図の前に置かなくてはいけません。 正確な特性を得るためには部品を直列や並列にしなくてはなりませんが、部品点数が少ない方が良い場合も有り難しいところです。

まずは基準とする中間のポイント318μSに対して
6.8KΩ*0.047uF=319.6μS(498hz)  これを元として計算します。

高域の開始ポイント(6dbで下がる)75μSに対して
((68KΩ*6.8KΩ+(68KΩ+6.8KΩ)*10KΩ)*0.047uF*0.00526uF)/(68KΩ*(0.047uF+0.00526uF)+6.8KΩ*0.047uF)=77.2μS(2060hz)

そして、低域ポイント3180μSに対して
68KΩ*(0.047uF+0.00526uF)+6.8*0.047uF=3873μS(41hz)

CRとはコンデンサーと抵抗の事で、この組み合わせは6dbのカーブで減衰するのはご存じの通りです。 基準500hzの値が決まっていて、そこを20db下げれば良い事に成ります。 20dbは約10倍なので6.8kΩの9倍が61・2kΩです。近い抵抗は68kΩ。 これで10分の1くらい。 なんと50hzと500hzが決まり、後は又2130hzで高域をカットさせればRIAAプレイバックカーブが描けます。 だいたいの感じが掴めましたね。 抵抗の誤差1%品があるとしてもコンデンサーは良くて5%、悪ければ20%で中々計算通りにいきません。 正確なほど音質が良いと言う事でも無い様に思えてきました。 RIAAイコライザー素子を構成するコンデンサーの材質に拘った方が正解です。 フイルム系かオーディオ用の部品を選ぶのが一番です。 その後6AQ8イコライザーでも製作しました。 多少の変更で随分好くなったので参考にして下さい。

とりあえず作ってから微調整

実際に作ってみるとRIAA特性が予定通りに行きません。 前段の送出しインピーダンスの関係ですね。 測定器を見ながら少し変更して追い込んでみました。 一度測定してから定数を変えて又測定。 此れを繰り返すと、傾向的な物が解ってきます。 当初は±4db位のズレがありました。 根性も部品も無いので適当に設定を変えていきます・・・、とりあえず±1db位を目標に定数を変えていきます。 厄介なのは空中配線である程度完成させて、図面に記入して綺麗に組込むと特性が変わってしまう事でした。
  MCカートリッジで有名なDL103は約12倍のトランスを使うので4mV有りますが、現在使用中のMMカートリッジはマランツのプレーヤー付属品で出力が2.5mVしかありません。 この差は結構問題ですが、規格が統一されてないんですね。 此処では2.5mvから、最高の1Vを取り出してパワーパワーアンプに直結したいと思います。

ウエスタン・エレクトリックWE396A仕様・RIAAイコライザー回路図

最終的に完成したのは3台目に成ります。 初期1台目は直熱管のマイクロホニックノイズでアウト。 2台目はバッファーアンプに1段P−G帰還をかけ約6倍の増幅で製作。 3台目がこれ、電源をセパテートにしてハムもノイズも全く無い事から、負帰還を辞めることにした。 大きすぎる増幅率を下げる為にWE製のビンテージ品の入力トランスを利用しました。 さて、イコライザー素子の部品は多少気を使います。 図面中の青色で記したR1はオーディオ用の物か金属皮膜等の物が良いと思います。 C1〜C5のコンデンサーはオーディオ用と言われている物がフイルム系が良いです。 尚C3は4700Pと560Pを並列で使っています。 +B電源は280〜310V位までの範囲で問題なく使えるので調整も不要です。 イコライザー部のコンデンサーは全てフイルム系に交換しました。 しかしフイルム・コンデンサーは高価です、VSRの抵抗も・・・1本1200円!

RIAA特性
約40ポイントを測定しました。 まだ完璧とは言えませんが、手元にあったセラミックコンデンサは30年前以上前のストック品で種類が少なくて検討に困りました。 少し部品を揃えないと正確な所まで詰められません。 結果、カーブの誤差は多少あります。 1khzを境に高域は殆んど重なっていますが、低域は多い所で1.2db程高くなっています。 しかし基準点を変えると考えようでは±0.6db。 とりあえず勝手に合格としました。 (もう少し詰められますが根性が・・・) ここに使ったイコライザー素子のコンデンサーはオーディオ用では無いセラミック・コンデンサーで2次、3次、4次といった歪が出るそうです。 温度特性も良くないので信号の通る場所のコンデンサーは全てフイルム系に変えました。
歪率特性
下側が出力端子のボルトレンジで2V迄です。 測定器の関係で上手く測れませんが1khzの特性です。 ま〜十分な特性ではないでしょうか!
完成しました
イコライザーアンプはアースラインを考えて配線しなくてはいけません。 当初は少しハムがありました。 出力トランスを使わない予定だったので適当に配置しましたが失敗です。 ケースが縦長の物を選んだので、入出力の信号線が電源の脇を通っつぃまうので悪さをします。 勿論、アンプのボリュームを全てMAXで使う事は無いですが、そこは拘りをもって最高の物に仕上げたいと思います。 結局現状のままでは限界を感じ電源トランスを分離してセパレートにしました。 昔のラックス・キットのプリアンプに有りましたね! 懐かしい。  今回は真空管1本づつアースポイントを作って最後にアース線を1点のシャーシー・グランドに落としてあります。 ボリュームMAXでもハム音は全くしません。 一部30年以上前のカーボン抵抗を使った為にボリュームを最大にすると僅かですが「サー」と音がしてました。 昔懐かしい感じで此れも又、おつな感じでしたが、図面のR1の47kΩをVSRと言う抵抗に交換しました。 この場所の抵抗は大事です。 普通のアンプでもボリュームは良い物を使うのと同じです。 1発目の抵抗が駄目だと後に尾を引きます。 確かに何倍にも増幅するのでノイズの出ない部品が必要なのは当然です。 肝心な音質! 比較するものが随分前に製作したNF型のイコライザーですが、比べると今回のイコライザーはバランスも良く低域の出方が凄く良い感じです。 中音に透明感があって高域も綺麗な音で驚きました。 身震いするほどの感動です。 
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