2016年Stereo8月自作スピーカ

2016' 8
付録8cmメタル振動板スピーカーFostex M800
無共振コンクリート
たまご型バスレフスピーカー
Concrete Egg

 音楽之友社STEREO誌8月号付録にアルミ振動板の豪華な8cmスピーカーが付いてきました。 今年もコンテストが開かれるのでダブル・バスレフ式で参加予定です。 コンテスト参加は今回で6回目、初参加でグッドサウンド賞を頂いてしまい、受賞は3回。 匠部門でテクニカルマスター賞も頂きました。 更に良い物を作ろうと努力しています。 ま〜コンテストとは別な方向性で欲しい物を作る事にしました。 「たまご型バスレフ・スピーカー」を紹介します。 2〜3年位前から3Dプリンターで作る構想をしてましたが、大きな物が出来なくて今になりました。 自作の3Dプリンターを持っていますが最大サイズは12cm3なのでスピーカーは作れません。 外注も以前より価格も安く成ってきました。 以前から欲しかったのが、バスレフのコンクリートスピーカーです。 設計方法が異なり、普通のCADの様にはできません。 入力方法が違うので参考書を片手に、やっと3Dプリンターの図面が完成しました。 構成はプリンターの製作可能範囲を考えて3分割。 1組製作するのに約2週間かかりました。 フィラメントと呼ばれる材料が無駄に成る部分が有り安くなったと言っても、マダマダ安くは無いです。 型を作ってからコンクリートを入れ約1週間待ちます。 すると20mm厚前後の強固な一体成型のコンクリート・スピーカーが完成します。 合板との比重は約6倍違うので、板厚換算で120mm。 まるで巨木をくり抜いた様な頑丈なイメージが想像できます。 この形状は音質に悪影響な定在波が殆んど出ない事が特徴で、吸音材が最小限又は不要になります。 また、この筐体に加え、アルミ振動板フルレンジの為、中高域が余すことなく再現されます。 固いコンクリート壁は振動を抑え低域の音圧低下を防ぐ事から音圧も高く締りと抜けの良い再生能力があるので自然な音、爽やかな心地よさが魅力です。 低歪な生々しい音質が売りです。

設計コンセプト
今回は2種類のスピーカーを製作していて、両方とも基本コンセプトは同じです。 空気室内部比率に1:1.4(√2)を使うと言う物です。 此れは定在波防止対策で、上手く行くと吸音材が少なくて済む、或は不要と成ります。 白銀比と呼ばれ、日本人好みのサイズとも言われ大和比とも呼ばれます。 コピー用紙の縦横比が此れに当たります。 ドラえもんやトトロもそうです。 数学的に美しいサイズです・・・。
周波数特性表
 
(最終値では有りません) 上の表はマイク軸上30cmの周波数特性です。空気室容量は約4.6リットルの設計でバスレフポートは30φの塩ビ管を利用して、最適な長さを探ります。 ポート共振周波数は計算値--hzに合わせた場合の物です。
高調波歪表
(最終値では有りません) 上の表はマイク軸上5cmでの高調波歪の現在の特性です。 黒線:F特、青線:2次高調波歪、緑線:第3次高調波歪、灰色線:ノイズで、F特以外は+40dbして表示。 測定用マイクが近過ぎるので低音が低めに見えますが、十分な延びが有ります。 ダクトの共振周波数は--z位。 吸音材は入れなくても目立った大きな定在波が無く、しかも高調波歪が2次、3次共に揃って低いのが良いと思います。 この表の見方も詳しくは無いですが歪は低いほど良いのは誰でも解ります。 4.5khzの第3次高調波歪は小口径フルレンジユニット特有の振幅変調歪とか、分割振動とかですね、物理的な問題は無視。 音量を上げると300hz、880hzに少しだけ定在波と思わせる高調波歪が増えますが、これも無視。 40〜60hz付近の第2次、3次の高調波歪の高い原因は、ダクト共振によって増幅された重低音域です。 量を得る為に質(歪)が犠牲になります。 ただ、100hz以下の低域に質を求めてもね・・・。 バスレフ方式は概ねこの様な感じで低音を持ち上げる構造です。 音楽で重要なのは100hz〜4khz。 これは「スピーカーの40万の法則」と言うのがあって、低域と広域のバランスの良い範囲です。 この40万の法則に丁度歪の低い位置が、それに合わせた様に収まっています。 F特と違って音量によってデーターは大きく変わるので目安です!

ベクターワークスと言うソフトで3D図面を作っていきますが、実際に作るのは機械です。 ま〜機械に頼った部分が多いので、自作と言うのが微妙ですが、塗装を外注するのと同じとも思えます。 それよりも、形がタマゴ型、富士通テン等の商品も有るので特別なイメージが有りません。 従ってコンテストに応募しても一次審査通過は難しいと思います。 ただ、苦労が多く、図面が出来上がっても制約が多い機械がNGを出してきます。 0.4mmづつ段を重ねられる構造が必要で、何度も作り直しがありました。 コンクリートを入れている途中で型が壊れてしまう事も有り、辞めたくもなりましたが、ホームページで紹介したいと言う思いで、何とか作り上げました。
 完成してみると成績がトップクラスの優等生です。 自作スピーカーの本来の目的は作って楽しむ事以外に心地よい音を聴くところに有ります。

方式
たまご型コンクリート・バスレフスピーカー
ユニット
Stereo Fostex M800
インピーダンス
8Ω
出力音圧レベル
82.5db/w/m
最大出力
5W
ポート共振周波数
エンクロージュア内容積
4.6リットル位
線材
銀メッキ、銀入りハンダ
吸音材
無い
材料
コンクリート一体成型(3DプリンターPLA樹脂成型枠)
仕上げ
簡易黒色塗装
サイズ
230φ 奥行31cm
重量
約8.5kg
コンクリートの厚みは18〜21mm位で重量が約8.5kg有ります。 ダクトは市販の30φの塩ビ管を差し込んで使います。 共振周波数は68hzを中心に合わせ込んでいきます。
2016年。STEREO誌8月号の付録。 FOSTEXとの共同企画と言うM800スピーカー・ユニットです。 アルミ・メタル振動板で、等価質量が重いので低音が良く出ます。 但し最大出力5Wで能率は82.5db/W 一寸低いですな!

3Dプリンターで作った前面側の部品です。2016年8月号付録M800スピーカーに合わせた物です。 ダクトは前面下側に向けて有ります。 置き方によって低域の出し方を工夫することも可能です。

3Dプリンターで作った胴体部分の部品です。女性のハイヒールの様な足が1本有り、前側のパーツと合わせて3点支持で本体を支えます。 当然、足の部分にもコンクリートが入ります。
3Dプリンターで作った後方の蓋です。 スピーカーターミナルを其々通して共締めします。 線材は銀メッキ線、銀入りハンダで直結します。 これば後方のボロ隠しの部品です。
後方にコンクリート入れて一体成型のコンクリートスピーカーに変身します。 この部品は水を入れてみると細かな穴が沢山ある事が分かります。 こういった部品は全てこの様な仕上げで0.4mmの線の集合体でできたプラスティック部品です。
コンクリート挿入時はかなり汚れます。 塗装の時に使うシートで全体を保護します。
此れは設計が悪くて、コンクリート挿入時に壊れた残骸です。 8.5kgのコンクリートに耐えられず自滅しました。 泣き泣きですが、枠の強度は思っていたよりも弱く、処女作は失敗。 対策してnext・・・「生みの苦しみ」ってやつです。
コンクリート打設の難しい部分です。 乾燥の途中で2回割れてしまいました。 コンクリートスピーカー特有のノウハウがあります。 1つは翌日既に割れてました。 もう一つは3日目位にヒビが・・・。 実際に作るのは、そう簡単ではありません。
壊れるコンクリートスピーカーは1〜2日で割れてしまいます。 1週間位が山で、乾燥時は気が抜けません。 皮を剥いでみると、思っていた以上に細部までコンクリートが入り込んでいます。 此れならば安心ですね! 足は3点指示です。

乾燥中は外部に白い粉の様な物が出てきます。 1週間もすると真っ白になる部分も有ります。 3Dプリンターの部品は微細な隙間が有って水漏れします。 3Dプリンターのスジが多いですが、磨き過ぎると逆に汚くなってしまいます。

ホームセンターに有る水を入れて混ぜるインスタント・コンクリートを注入して翌日には1〜2mm下がっています。 この状態で自然乾燥1週間待ち、シリコンコーキングを充填して蓋をします。
後方の蓋は スピーカーターミナルで挟み込む方法です。 3Dプリンターで印字した部品は0.4mmの線を重ねて作って行くので、表面は凸凹です。 後は軽く磨いて黒塗装のみ行い簡単に仕上げて終わりです。 
後方から見るとご覧の様に成ります。 ケーブルは5.5φ迄、バナナプラグにも対応します。 スピーカーも此の形なら、設置場所の定在波対策にも貢献しそうですね!ターミナル取付部分はナットが締められる様に平らに成っています。
3Dプリンターで作った3点の部品で繋がっています。 水が漏れない様にコーキング材でシールしてから、コンクリートを一体成型します。 接合部は0.5〜1mm位の隙間がどうしても出てしまいます。
足の部分はクッション材を付け、3点指示で支えます。 ダクトはPV30の塩ビ管を入れてあります。 長い筒にピッタリ入るので接着剤は不要で、好みによって交換ができます。
前面はスピーカーの四済が飛び出さないギリギリの約102mm。 回析効果最少となるバッフル面に成ります。 一般的に此の部分は小さい方が、点音源を考えると最高でしょう!
コンクリートたまご完成しました。 タマゴ型は普段見かけるので新鮮味が全く有りませんが、音響的には凄く良いはずです。 富士通テンやパソコン脇に置く小さな物迄多くあります。 此れを本格的にコンクリートで作りました。
用意したダクトは8種類で60〜130mm迄で、周波数は72hz〜53hzの範囲です。 全てF特と高調波歪特性を記録しました。 この箱の容積に合う調整が必要ですが、歪特性や周波数特性を見ても最良はどれかが決まりません。 最終的には自分の好みで決める事に成ります。

コンクリートスピーカーは型にコンクリートを入れるだけですが、型が壊れたり硬化途中にコンクリートが割れたり、ヒビが入ってしまう事が多く設計ミスも合わせ、この卵、4個目で完成しました。 ただし無垢の丸太と違って、ある時期を過ぎると問題有りません。 コンクリートスピーカーは数セット作ってきましたが、構造によって注意点が異なる様で、今回のノウハウが少しづつ解ってきました。

最良点と思われるダクト共振周波数とダクトの長さは後日詳細を・・・。

いずれにしても、バスレフとタブルバスレフの違いは音質に現れます。 ホーン系スピーカーが好きだった私が初めてダブルバスレフを聴いたときに低音の遅れと言うか違和感を感じました。 今では慣れてしまったのか感じないのですが、バスレスの方が良い事は解っています。 それは、分かる方には判るのです。 よく聞く「低音は欲張らず」がこの手の箱には似合います。
 やはり、良い音のスピーカーにはオーラが・・・。 低音域は無理の無い良いと思う限界まで、しかし、ダブルバスレフの様にはいきません。 音楽性の良い所に設定しました。 此れが2,3年前から欲しかった私の理想としていたコンクリート・スピーカーです。

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