◆ 上高地−太古のロマン = 3 = (3/3)  ◆

= Geological_Topics =

 


■ 太古の謎

地質の面から見ても、上高地は、謎(?)が多いところです。
第=1=項で、上河地から上高地へと変遷したという説が一般的、と書きました。
「河地」という言葉は、山の谷間に広がる盆地、といった意味があるようです。

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標高1500m付近に、突如として現われる盆地、それが上高地です。
西側〜北側に穂高連峰,槍ヶ岳、
東側に霞沢岳などの3000m級の山々に囲まれています。
しかも、これらの山容は、きわめて急峻な岩肌を呈しています。

また、前項でもおわかりかと思いますが、
釜トンネルから山麓の松本盆地までは急峻な地形を呈しています。
岐阜県側の平湯,新穂高などの温泉地も、山岳地形の中にたたずんでいます。

昭和40年代、幼少期に上高地を訪れて以来、機会あるごとに足を運んできました。
学生時代までは、主に、景観に感動するだけでした。
社会人となり、職業柄、地形・地質に興味を抱いてから、
上高地に対する意識が変化したのです。
   なぜ、山の中なのに平らなんだ!
   なぜ、こんな山の中に平地があるんだ!
大きな疑問と興味が涌いてしまったのです。

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ご多分に漏れず、同様な疑問や興味を持たれている方がいらっしゃいました。
しかも、専門家で、
私が興味を持つずっと以前から、多方面から調査研究をされていたようです。
関連すると思われる数々のサイトをブラウズするうちに、私の疑問は氷解しました。

それは、焼岳です。
現在も活動している活火山です。
大正4年、噴火による泥流が梓川を一日にしてせき止め、大正池が誕生しました。
史実がキーワードだったのです。


= 河童橋より、焼岳を臨む (フリー素材引用) =

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太古(恐竜が出現する頃)の時代、
梓川は槍ヶ岳に源を発し、岐阜県側に流れていたという説です。
槍ヶ岳(槍沢)・涸沢〜横尾〜徳沢・明神〜河童橋、
そして岐阜県側の高原川へ、やがて神通川〜日本海へ、というものです。
安房トンネルや平湯トンネルを建設するための事前地質調査などから、
太古の河川の形跡(川が流れていたことを示す跡)が知られているそうです。

焼岳の火山群が大噴火し、
隆起してその川の流れをせき止めたのです(26000年前頃から)。
現在活動しているのは焼岳のみですが、
隣接する白谷山やアカンダナ山が、かつては火山として活動していたようです。

研究者の方々には失礼な表現なのですが、
素人がひとことで簡易にまとめると、次のようになるのではないでしょうか。

 焼岳の噴火泥流が梓川をせき止め、大正池が誕生。
 この事象の大規模なもので、焼岳が噴火隆起して梓川そのものの流れを変えた。
 焼岳が天然の大型ダム(砂防ダム)の役割を果たし、
 梓川上流から運ばれる土砂を堆積させ、上高地が形成された。

= 太古の梓川の流れ(想像) = = 現在の梓川の流れ =

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上高地の地質は、深さ50m程度まで砂利が堆積しているそうです。
地表に見ることができる梓川の川原と同じ砂利類で構成されているのです。
ちなみに、上高地を取囲む穂高連峰は、安山岩系の岩石で構成されています。

このように、強固な岩盤でできた”すり鉢状”の底に(局部的に)、
河川によって運ばれた砂利類が厚く堆積している地形、
それが『上高地』なのです。

 

     

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