◆ 上高地−太古のロマン = 2 = (2/3)  ◆

= Geological_Topics =

 


■ 上高地へのアプローチ

長野県松本市方面から、国道158号線を上高地方面に走ります。
波田町を過ぎ、梓川を渡り、安曇村(現在の松本市安曇)に入ります。
島々宿(安曇村役場周辺→松本市役所安曇支所)あたりから、急に梓川の谷が深くなります。

下流側から、
稲核(いねこき),水殿(みどの),奈川渡(ながわど)の大きなダムを経て、
沢渡(さわんど)に至ります。
日本の河川では、大きなダムがあるということは、
それだけ河川勾配が急であることも意味します。
( 注: 大きなダム ⇒ 高さ−堤高−が大きい)

一般車は上高地への通行が規制されているため、
沢渡でバス/タクシーに乗り換える必要があります。
(岐阜県平湯からバス/タクシーに乗り換える、というのも方法です。)
沢渡からも梓川の谷は深く、中の湯まで続きます。
中の湯地籍で、国道158号線は安房(あぼう)トンネル方面へ大きくターンし、
上高地方面は県道として分岐します。
ここに上高地への関所ともいえる「釜トンネル」があります。

旧・釜トンネルは、勾配がきつく、平均で12〜13%もあります。
水平に100m進む間に12〜13mを上る/下る程度の傾斜、と解釈してください。
文面で表現するとたいしたことないように感じられると思われますが、
道路としては、急坂に匹敵するでしょう。
たとえるなら、上高地を目前とした「胸突き八兆」でしょうか。

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■ 上高地

釜トンネルを抜けた瞬間、空は大きく開け、梓川の流れも緩やかになります。
左前方に焼岳を臨みながら進むと、
やがて、正面に大正池と穂高連峰の姿が現れます。


= 大正池より、初冬の穂高連峰 =

やや観光ガイドに近くなってしまいますが、個人的なおすすめは、
大正池でバス/タクシーを降り、残りの道程は散策しましょう。
  大正池〜田代池〜河童橋と辿り、
  周辺で、小梨平や中の瀬園地,ウェストン碑(レリーフ)あたりへ足を伸ばし、
  帰途は河童橋近くのターミナルからバス/タクシーに乗車する、
という行程が無難でしょうか。

しかしながら、団体ツァーにありがちな上記行程は、
上高地のほんの一部(さわり)に過ぎません。

明神池(みょうじんいけ)まで、訪れてみてはいかがでしょうか。
梓川左岸・右岸に遊歩道/登山道が設置されていますので、
往路復路で一周するというのがよろしいかと思われます。

明神岳(みょうじんだけ)の姿を仰ぎながら、
聞こえてくるのは梓川のせせらぎと鳥のさえずりだけ、そんな散策となることでしょう。

驚くほど平坦な道のりで、島々宿から沢渡〜釜トンネルまでの、
狭い谷筋や急勾配の道路事情がうそのようです。

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■ 奥上高地

明神池までで喜んではいられません。
梓川左岸を、さらに上流へと歩を進めてみましょうか。

まもなく、右側に学校の校庭ほどの「草むら」が現れます。
徳沢(とくさわ)の牧場跡です。
かつて(明治〜昭和初期)は、夏期、牛や馬が放牧されていたそうです。

もう少し歩きましょうか。
やがて左側に新村橋(しんむらばし)という吊橋が現れます。
クライマー「新村正一」氏にちなみ、命名されたそうです。
また、遭難者の遺族の方が「ここに橋があったなら命をとりとめられた」、
という願いを込めて架けられた、といった言い伝えも聞いたことがあります。

奥又白沢を左手に見ながら少し歩を進めると、前穂高岳東壁が姿を現します。
さらに左側に屏風岩を見ながら進むと横尾(よこお)に到着です。

ここから、左に涸沢〜穂高連峰方面、右が槍ヶ岳方面、裏ルートとして蝶ヶ岳方面、へと分岐します。
明神池〜徳沢〜横尾は、『奥上高地』と呼ばれているようです。

横尾まで来ると、
せめて涸沢まで、せめて槍沢ロッジまで、となるのが人情(欲望?)でしょうか。
しかしながら、いくら平坦な道のりとて、油断は禁物です。
時間的余裕や、最低限の装備(飲料水・食料・雨具など)は、絶対に必要です。
しかも、横尾を過ぎると、「真の山道」に豹変します。


= 横尾より、夕暮れの前穂高岳 =

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実際には、やはり時間的余裕からか、一般観光客の姿は、
徳沢〜横尾あたりまでというのはシーズン中でも少ないようです。

見解は様々でしょうが、個人的には、
「俗化が進まないまま後世に残したい/残しておくべき上高地」がそこにある、
という思いがあることは事実です。

人間を拒むほど気高く厳しい上高地、
そんな姿のままであって欲しいと願ってやみません。
もはや、「上高地の真の姿」は、冬の間にしか存在しないのでしょうか。

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   つづく ( 上高地-太古のロマン = 3 = )
 

     

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